だいちゃんの時間を見つけて書く日記(Hateblo版)

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【あやらぶ】外伝1考察②:武陵桃源とチー

引き続きあやらぶ(あやかしランブル)に関する記事です。
前半に続く外伝1「桃花源祈」の考察となります。


前半同様、最新章のストーリーに関連する内容となるので、ネタバレを多く含みます。
以下、できれば外伝1のストーリーや下記あやらぶ開発チームの外伝1に関するツイートを読了してから読んでいただくことをお勧めします。


後半の記事ではストーリーの舞台となる「武陵桃源」ともう一人のメインキャラ(メインヒロイン?)の「チー」にスポットを当てて考察していこうと思います。

武陵桃源

「武陵桃源」について

今回のストーリーは「武陵桃源」という世間では既に居ないものとされる神とヒトとが共存している町です。

本編でもヤクシニが語っていますが、「武陵桃源」とは「桃源郷」の別名です。
wikipedia:桃源郷



桃源郷」=「武陵桃源」は、東晋末から南朝宋の文学者・陶淵明の作品「桃花源記」が出自となっています。
今回の外伝1の副題「桃花源『祈』」は明らかにこの「桃花源記」から取られているものと思われます*1

武陵桃源で暮らす神様達

イザナミ


wikipedia:イザナミ
イツクサに現れ安倍晴明・葛の葉と行動を共にした神の一柱。ナギと酷似した姿など文字通り最重要人物。原典はイザナギと共に「国産み」をしたエピソードや死後の黄泉比良坂でのエピソードなどが有名です。
葛の葉や三貴神(アマテラス・ツクヨミスサノオ)と別れた後も晴明と行動を共にしていたことは明かされていますが、なぜかこの場にて登場しました。
神としての力はほぼ失っている(武陵桃源に住まう神はほぼ力を失っている)ようですが、1000年前のことを懐かしんだり陰陽寮のことを気にしたりとおそらくイザナミ本人だと思われます。
なお、他の神と異なりイザナミは「神使」を一人も作っていません。そのことがストーリーの最後半において重要なこととなってきます。

アメノミカゲ


wikipedia:天目一箇神(「アメノミカゲノミコト(天之御影命)」の別名)
原典と同様、鍛冶の神様です。
武陵桃源に登場する神の中では最もイザナミと仲が良い(なお今回の話では「女神」)描写がありますが、おそらくアメノミカゲがイザナギ伊邪那岐神)の別名とされる説があることからではないかと思われます。

河伯



wikipedia:河伯
川・河川の神様とされています。原典では元々黄河の神でした。
今回のストーリーではヤクシニが操る道術の開祖の一人とされており、重要な役割を果たすことになります。
実際に河伯陰陽道における土地神・自然神の一柱です。

トヨタマヒメ


wikipedia:トヨタマヒメ
河伯と事ある毎に張り合おうとする海の神様。原典でも海神(わだつみ)の娘となっています。
原典では竜宮に住んでいるという話なので、もしかすると乙姫と何かしら関連性があるのかもしれません。

オオヤビコ


wikipedia:大屋毘古神
大工の神様となっています。
原典における「大屋毘古神」に関しては「家宅六神の一柱」と「五十猛神の別名」という二柱が居ますが、今回は「大工の神様」のようなので前者ではないかと思われます。
後者(林業の神)については、あやらぶ世界では「イソタケル」というそのままの名前を冠する式神が居ますからね…。

タヂカラ

wikipedia:アメノタヂカラオ
オオヤビコのセリフのみにて登場。何の神様かは不明ですが、おそらく原典における「アメノタヂカラオ」ではないかと思われます。
天岩戸に隠れたアマテラスが顔を出した際に岩戸から引きずり出した神様として有名ですね。

武陵桃源と「八卦

ストーリーの序盤から中盤にかけてヤクシニ達は武陵桃源の世界を調べていきますが、最終的に「仙道五術」に基づいてこの世界が成り立っていることを突き止めます。


この際に出てくる武陵桃源の全系図は「八卦」を基とした構成となっています。
wikipedia:八卦
また、チーと行動を共にするショショウが途中で「八卦」に言及しており、今居る所は「南東」で『兌』に当たるという発言もしています。

八卦」の順序には「先天八卦」と「後天八卦」の2通りがありますが、ショショウの発言を踏まえると武陵桃源を構成している「八卦」は前者の「先天八卦」であることが分かるようになっています*2

チーと「チーリン」

外伝のストーリーの前半~中盤にかけては、ヤクシニやリン側の話と同時進行で武陵桃源に住む少女「チー」の話も進められていきます。

チーが自らを「権能を失った神の破片」という「ショショウ」と名乗る人物と出会い行動を共にする中で、武陵桃源そしてチーに関する重要な事実が明らかになっていくというのが本編のもう一つの骨子となっています。

「チーリン」と「麒麟

後半、ショショウの真の目的が明かされると共に現れたミズノエの口から「チー」の本来の名前は「チーリン」であると告げられます。

この「チーリン」ですが、「麒麟」の中国語読み(拼音での発音)だったりします。割とそのままだった訳です…(^_^;)
wikipedia:麒麟
原典での「麒麟」は泰平の世に現れる動物(瑞獣)とされていますが、あやらぶの世界観では元々は「幸福を司る霊獣」だったものが「獣の力で形作られた幸福は長続きせず破滅する」という形に歪めて伝えられる中で、「マガツヒに転ずる」という性質を後天的に付与された存在として描かれています。



「獲麟」と「ショショウ」

最終局面において、ミズノエは「チーリン」とマガツヒ側の「麒麟」を切り離すため、後者に「獲麟」と名付け別の存在として実体化させるという奇策に出ます。

この「獲麟」ですが勿論元ネタはあり、中国の「麒麟」にまつわる故事が原典となっています。
wikipedia:獲麟
「獲麟」の故事の意味は「物事(あるいは人生)の終わり」で、あやらぶの世界観における「麒麟」が背負う「歴史の始まりと終わりを繰り返す存在」の「終わり」の部分をそのまま切り取ったものと言えます。

なお、「獲麟」の故事において麒麟(と思われる気味の悪い生物)を捕らえた人物が実は「鉏商(ショショウ)」という名前だったりします。こういう細かい所にもちゃんと気を配られているのはさすがだなと思わされます。

「ひまわり」の意味

武陵桃源での出来事が終わり元の世界に戻ってきたヤクシニ達は武陵桃源があったと思われる場所にひまわり畑を発見します。
このひまわり畑ですが、冒頭から前半にかけてチーがひまわりを育てていることが伏線となっています。

さて、「ひまわり」には花言葉がかなりあり、本数や色によっても様々な花言葉があったりします。
ひまわり(向日葵)の12の花言葉!本数で意味が違う?由来が怖い?
中でも気になる花言葉は「あなたを幸福にする」「憧れ・愛慕」「待っててね」の3つでしょうか。
「あなたを幸福にする」はあやらぶ世界における霊獣「麒麟」が本来持っていた性質ですし、「憧れ・愛慕」は友人を欲しがっていたチーの想いをそのまま表したものです。
そして再会を意識した花言葉である「待っててね」は、ストーリー最後のミズノエのセリフと合わせると色々と思う所がありますね。

「チーリン=麒麟」の再登場はあるのか?

という訳で、今回のエピソードにおける「チー=チーリン=麒麟」について考察してきましたが、話の締め方を踏まえると再登場して欲しい、できればプレイヤーが操作できる式神として登場して欲しいという想いはやはりあるかと思います。

四獣がそれぞれ朱雀=火属性・青龍=水属性・白虎=風属性・玄武=闇属性となっているのに対して、ちょうど光属性だけ残ってしまいますからね…。
気になるのは、最終的に「獲麟」の部分も再度取り込み元の「麒麟」という形で自然と同一化してしまった点ですが、振り返ってみるとカノエやミズノエのような「四獣」も元々は自然現象に近しい存在だったのを晴明により新たな名前を与えられると共に権能を切り離したとあったので、麒麟についても今後同じような手段が行われる可能性はあるのではないかと思います。
その場合、「麒麟」は五行思想においては五獣のうち「黄龍」と同様に『土』性に割り当てられているので、四獣の名付け法則を踏まえると「『土』性の『陽』」に当たる「ツチノエ」となる可能性もありそうです。
wikipedia:五行思想

という訳で

あやらぶの最新ストーリーである外伝1の内容について2つの記事で諸々考察してみました。
今回の外伝だけではなく、あやらぶのストーリー各編(メインストーリー・イベントストーリーどちらも)は色々調べてみてから改めて読み直してみると「成程」と思わされることが結構あったりします。
ちょうど2022年8月現在twitter上では「読書会キャンペーン」なる企画も開催されていますので、この機会にストーリーを振り返ってみるのも良いかもしれませんね。

*1:「記」も「祈」も音読みでは同じ「キ」です。

*2:「後天八卦」では『兌』の方角は「西」に当たります。